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映画情報
原題: The Whales of August
製作年:1987年
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:リンゼイ・アンダーソン
上映時間:90分
あらすじ
アメリカの片田舎の島――八月に鯨がやってくるが久しく見ていない――に暮らすリビーとセーラの姉妹と姉妹の50年来の友人のティシャ。そして彼女たちを取り巻く老人たち。そんな彼らの日常を描いた映画です。
日常を過ごす中で、少しずつ人生の終焉が迫って来ていることを自覚している姉妹のそれぞれの心の動きが観ているものの心を打ちます。皆に等しく訪れる人生の末期、どういう風に生きるのか考えさせられる映画です。
キャラクターたち
白内障で目が不自由なリビー(ベティ・デイヴィス 78歳)。 皮肉屋でわがまま言い放題でセーラを困らせています。人生もう長くないことと、セーラに世話をしてもらわなければならない体であることが輪をかけて厭世的で後ろ向きな姿勢になっており、更にセーラを困らせます。
でも文句を言いつつ、セーラの言うことをちゃんと聞くのですごい憎たらしいわけでもないです。
妹のセーラ(リリアン・ギッシュ 90歳)。実質主人公です。 夫には前の戦争(第2次世界大戦)で早く先立たれて、子供もいないですが、前向きに生きようとしています。
親友のティシャ(アン・サザーン 78歳)。姉妹と同年代のはずですが若々しい。 陰陰鬱々としがちな姉妹のやり取りに入ってくる癒やしです。明るいというより、楽天家ですね。あとおせっかい。
自然は変わらないが、人は老いていく
この映画、空と海が非常にきれいです。ただ、姉妹たちはその海に向かって50年前の海の思い出を昨日のことのように語ります。 変わらないものと変わっていくもの、流れる時間で変わるものの無常さが滲み出ています。
リビーはもう悟ったかのように、今の生活を変えることなくあとは終えるだけという考えで、変化を促す人間に対してきつい態度を取ります。
目も手足も思うように自由が効かなくなり、美しかった髪も死んだ母親のように真っ白に。そんなリビーの老いと病に対する歯がゆさ・苛立ち・諦めが周りの人に対するきつい態度となって表れているのでした。
セーラも頑ななリビーの影響を受けて、少しずつ後ろ向きになっていきます。出入り大工のジョシュアに月明かりを取り入れる窓を新設するかどうか聞かれて、もう老人だし……と断ります。
しかし自然の美しさがまた、セーラを前向きにします。 鯨を見るため、美しい月の光を見るため……理由は色々あるでしょうが、最期の瞬間まで進み続けることをセーラは改めて決意します。
リビーもセーラの前向きな姿に心を解き、二人で岬に鯨を見に行くことに。
セーラ「鯨はもう行ってしまったのよ」
リビー「そんなことは誰にもわからない」
まだ人生には何かがあるかもしれない、という暗喩のようなやり取りで物語は幕を閉じます。
ここでも空が青く美しいです。
役者魂を見る
姉リビーは何がジェーンに起こったか?で怪演した大女優ベティ・デイヴィス。
ベティ・デイヴィスは79歳になっても何がジェーンに起ったか?に引き続き嫌われ役が本当に上手です。素もこんなんだったんでしょうか。
健気な妹セーラはサイレント映画時代から活躍している大女優リリアン・ギッシュ。恥ずかしながら、まだこの人の映画はこの八月の鯨しか見られていません。
90歳ですが一挙手一投足が可愛いおばあちゃんです。なんというか、まあ、見ればわかる!女優は何歳でも女優だ!! 二人の若い頃の作品を今度見ようと思いました。
ちなみに
ふかわりょう氏が好きな映画に挙げていました。
あと、リビー役のベティ・デイヴィスが危ない役をやるときの本田博太郎氏に似ている気がします。
評価
★★★★★
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