この記事のもくじ
日産のFY19 Q2(4月-6月)の連結決算利益は16億円
- 売上高 2兆3,724億円
- 営業利益 16億円
- 親会社株主に帰属する当期純利益 64億円
アンチ日産がそれ見たことかと喜びそうな数字です。
この前書いた不調はいつまで続く?の記事ですが、不調は思ったより根が深かったようです。
しかし、ギリギリ黒字にしているあたり、なにかコントロールしているような気がしていますが、ここ10年くらいで一番悪い数字なのは確かです。
悪材料は下記となっています。
- 北米での販売不振
- 新技術への投資
新技術はともかく、北米での販売不振はブランド実力相応の水準に戻っただけだと思いますが、インセンティブ(販売奨励金)積み増しで無理くり売っている間の生産能力拡大で生産能力を上げすぎて、現状大幅な余剰能力(設備、人員)を抱えてしまって維持費がかさんでしまっているものでしょう。
また、コミット達成の大号令で作りすぎた在庫車が工場~ディーラー間に相当積み上がっていて、お金になるまでリードタイムが相当かかっていてこの結果かとも考えます。
さらに生産能力余剰は北米だけではなく、インドやロシアでも同様な状態だと考えられます。
工場関係ニュース数例紹介
北米地域工場の一時操業停止
アメリカでの販売台数推移です。
- 2012年度:114万台
- 2013年度:129万台
- 2014年度:140万台
- 2015年度:151万台
- 2016年度:158万台
- 2017年度:159万台
- 2018年度:144万台
14年度から急に販売台数が跳ね上がっています。日産パワー88達成のためにこの頃から販売奨励金積み上げの販売台数重視戦略に走ったものだと考えられます。
註:日産パワー88→カルロス・ゴーン前会長が2011年に掲げた中期経営計画。世界シェア8%、利益率8%を2016年までに達成するもの。どちらも未達に終わった。
途中からインセンティブを抑えた18年度は144万台と減っていますが、それでも2013年度の129万台より売れてはいます。
ただ15万台減のギャップは大きかったようで、2015年にメキシコ・アグアスカリエンテスにて日産アグアスカリエンテス第2工場を立ち上げ、アグアスカリエンテスに2箇所、クエルナバカに1箇所、計3箇所の工場でメキシコから北米地域へクルマを供給していますが、2018年には在庫調整のためアグアスカリエンテスの2工場が一時稼働休止し、すでにこのとき社員を1,000人解雇しています。
インド市場の失敗
2016年までにシェア10.0%目指すと謳っていたインド市場でしたが、2018年時点で1.2%に留まっています。
あまりの不振にディーラーの鞍替えや他ブランドの併売も相次いでいるとか。
インドなどの新興国で軸となるのはダットサンブランドですが、まったく成功した感じがしません。
個人的には内装で安物ブランド感がまんまんなのと、その割に外観デザインがドラスティックすぎるのが受け入れられないのだと思います。
新興国のクルマユーザーはもっとコンサバティブな、ストレートにカッコ良さを表現したクルマ、ホンダ的なデザインが受けるのでは。日本だとガンダムぽいとか言われていますが、シビック、シティなどにはわかりやすいカッコ良さや高級感があります。
新興国で車を買うのは一生モノの買い物になるでしょうから、そこでわざわざ安物・下級と位置付けられて生まれたブランドとクルマを選ぶことは先進国のユーザー以上にないでしょう。
現在では2020年までにインドでシェア5.0%達成と言っていますが、どうなることやら。
ロシア市場の縮小
ロシアが好調!と2017年に能力増強をしていますが、その後販売台数は2桁台で減少しています。
ロシア最大手アフトバスがルノー日産グループになってから、ロクな話がないロシア市場です。
NV200 欧州での生産終了
ルノーのOEMになる模様。
NV200は悪くはないと思いますが、さすがに10年もFMCしないと流石に時代遅れだったのかと。
その他地域向けは残りますが、スペインの商用バン生産拠点の縮小は避けられません。
日産のインドネシアとダットサン不振
簡潔に触れていてわかりやすい記事は下記。
日産ブランドで行けばよかったのに、ダットサンに鞍替えし、かつそのときに日産ディーラー網をすっぱり捨ててしまったため愛想を尽かされて急転落しています。
で、削減される人員はどのエリアなのか
これらと決算発表での西川社長のコメント↓
ある工場ではラインの1つを止め、場所によっては両方止めることもある。 ざっくり申し上げて不採算を抱えている海外のラインになる。 海外拠点、特に『パワー88』(カルロス・ゴーン元会長が12年3月期から 始めた数量拡大主義が中心の経営計画)の期間中に投資して小型車をやっていたところ、 とご理解頂けるとありがたい。ここというと決めてしまうことになるが、 車では新興国向けブランドである『ダットサン』と申し上げた。 小型車で海外拠点、パワー88で拡充したところというと、もうおわかりかもしれないが
ということで、ロシア、ヨーロッパ、インド、ダットサンブランドを作っているインドネシアでの一部工場orライン停止で12,500人を段階的に削減していくのではないでしょうか。
あとはダットサンブランド廃止で関係者の解雇と異動かも?
その他の不振の理由
メインモデルのモデルライフが長すぎる
- ヨーロッパではキャシュカイ、アメリカでは兄弟車のローグが日産内での販売台数ぶっちぎりトップ。中国ではエクストレイル+キャシュカイが2番目に売れています。が、2014年に出てもう丸5年。売れ筋ならいい加減FMCしないと賞味期限切れですがなかなか次が見えてきません。
- ヨーロッパでキャシュカイに続いて売れているジュークは9年。
- 中国でトップ、アメリカで3番目に売れているシルフィは7年。
- 各市場のボトムレンジセダンのラティオは8年。
- スポーツカーのフェアレディZは11年。
- スーパースポーツのGT-Rは12年。
- 商用車バンのNV200は10年。
- 同じく商用車バンのNV150 ADは13年。
といい加減どうにかせいレベルに来ています。その他の日本市場専用のクルマは言わずもがなでお察し。
お家騒動のゴタゴタもありーの、モデルは古いーの、でこんな状態で販売台数が増えるわけもないですね。他のメーカーの新しい同格モデルにユーザーが移ってしまいます。
その中でダットサンはクロスやRedi-goなどコンスタントに新車を出しています。
しかしRedi-Goは最初好調でしたが、それ以外はダットサンのどのモデルもパッとせず、貴重な開発費が無駄になっています。
リーマンショック前後での戦略変更
2008年9月のリーマン・ショック以降と以前でフルモデルチェンジ戦略が変わってしまった感があります。
リーマン・ショックまでに企画されたクルマは出したものの、それ以降は限られた車種のみだけフルモデルチェンジが企画されてそれ以外は放置されてしまっています。
このやり方だと開発費の節約で費用は圧縮でき、売れ筋モデルがFMCすればそこで台数は上がり、売れ筋ではないモデルはそのまま売って、ラインの減価償却が終わっていればそのまま儲けは出ます。
と短期的には良いですが、長期的に見ると現在のように売れ筋モデルだけが売れ、古いモデルは他のメーカーの魅力的な同格車があるのでそっちに流れ、と全体の販売台数が落ちてしまいシェアが縮小していくため、選択と集中を間違えた好例ではないかと思います。
まとめ
カルロス・ゴーン前会長がどういう意図で短期的かつ刹那的なこの戦略を取ったのか?
長期的に日産を死なない程度に不調に持っていってルノーとの経営統合を狙っていたのか、自身がトップの椅子に座っている間にコミット達成されればいいやという考えだったのか、今となっては知る由もないです。
来たばかりの頃のZとGT-Rは残す発言とか、2004年にティーダ・ラフェスタ・ウィングロードを同時発表して国内シェアを獲りに行こうとしたりとか、カーガイ経営者っぽさがあったのですが、リーマン・ショック以降はすっかりそれもなくなってしまったのが事実として残っています。
今の西川社長は手遅れになる前に一時悪化してでもツケを支払い、元々のブランド価値に見合った台数に修正し、いいクルマを出すことで長期的にブランドを育てて、自然と台数も上がるような仕組みに路線修正しようとしていると思うので踏ん張ってほしいところです。
2019年のQ2の今の業績が底の底で、2019年のQ3、Q4あたりでは挽回してくると思います。逆にQ3、Q4で赤字になるようであればいよいよヤバイですが、問題の構造を考えるとその可能性は低いと思います。なんとか構造改革して建て直してもらいたいです。
どうなるのか、答え合わせはとりあえずQ3の発表が出る3ヶ月後!
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